グーデリアン物語0-1

Bea-Kid's グーデリアン物語
《エピソード0》
「青い闘神物語」
PHASE1


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 黒い長髪を無造作に結んだ、大柄な少年が、森の奥の大木の根元で眠っていた。
 遠目には、安らかな眠りに見える。
 が。
 実際には、瀕死であった。
 餓死寸前なのである。
 それ以前に、身体を覆う無数の傷跡…大半は治っているのだが…が、彼の体力を消耗さ
せていた。
 ともかく。
 大柄な少年は、朽ちかけて大きな虚(うろ)のできた大木の根元で、眠っていた。
 
 青い短髪を風に揺らした、小柄な少年が、森の奥の大木の根元を見下ろしていた。
 遠目には、落ち着いて見える。
 が。
 実際には、必死であった。
 手段が見付からないのである。
 目の前にいる、重体重傷の人物…しかも、自分よりも身体の大きい…を、運ぶ手だてが
ない。
 ともかく。
 小柄な少年は、朽ちかけて大きな虚のできた大木の根元を、見下ろしていた。
 
「生きては、いるよね?」
 小柄な少年が問いかけると、大柄な少年の眉と口が、わずかに動いた。
「腹が、減った」
「パンと、干し肉と、きつくない葡萄酒がある。食べるかい?」
「ありがたい」
 のそり。
 大柄な少年は、気力を振り絞って身を起こした。
「虎族、だよね?」
 保存食兼務の堅いパンに葡萄酒をしみこませながら、小柄な少年が問う。
「猫族、だよな?」
 葡萄の匂いの移ったパンを口に運びながら、大柄な少年が問い返す。
 青毛猫族の少年がうなずいた。
「何故、俺を助けようとしている? 疫病神の虎族を?」
 猫族の少年はにこりと笑った。
「刀傷、矢傷、牙に爪の跡。刀や矢はともかく、そんな残酷な咬み方や引っ掻き方をする
のは、虎族以外いない。君は同士討ちか、仲間割れ…たぶん、後の方…で、けがをした」
「敵の敵は味方って事か?」
 虎族の少年は、葡萄の匂いのしないパンをかじった。
 猫族の少年は、すこし険しい顔になった。
「力のある者に力を貸す必要はないけど、弱い者は助けなきゃいけない。
 襲ってくる者とは闘うけど、そうでない者とは争わない。
 …今の君は、弱っていて、僕を襲おうとはしていない」
 言い終わると、彼はまた笑顔に戻った。
 虎族の少年も笑った。…顔に残る同族の爪跡のセイで、ちょっと歪んだ笑顔になってし
まったが…そして、
「フェザー。通り名は“長い雄叫び”だったが…変える」
と、天を見上げた。
 密集した樹々の枝間からわずかに見える青い空を、雲が流れて行く。
「“往く雲”。部族を出て流浪する身にゃ、ぴったりだ」
 フェザーの自己紹介が終わると、猫族の少年も名乗った。
「野風・ティトー。今のところは、だけどね」
「なんだ、あんたも家出と改名を構想中か?」 
 干し肉をくわえたまま、フェザーが訊くのに、ティトーは 
「家出はしないけれど、改名はすることになると思う。家に居る限りは、たぶん…絶対に」
と、厳しいような、つらいような、それでも誇らしげな、爽やかな笑顔を浮かべて応えた。


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