グーデリアン物語0-4

Bea-Kid's グーデリアン物語
《エピソード0》
「青い闘神物語」
PHASE4


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 夜が明けた。
「我が子よ」
 つい昨日まで『青い闘神・モーリス』と呼ばれていた青毛猫族の戦士は、幼い息子の胸
に、大きなメダルの付いたペンダントを掛けた。
 一つの儀式が始まったのだ。200年続くこの部族が、最も重要としている儀式である。
「『大いなる勇者よ、獣主との約定を違(たが)える事無く、永久(とこしえ)に続く名
を嗣(つ)ぐ時が来た』」
 ティトーの父が言うと、集まった部族の者70名余が、それと同じ言葉を繰り返す。
「『大いなる勇者よ、獣主との約定を違える事無く、とこしえに続く名を嗣ぐ時が来た』」
「『現(うつつ)の名を封じ、古(いにしえ)の名を名乗れ』」
「『現の名を封じ、古の名を名乗れ』」
「『新たなる、勇者【青い闘神・モーリス】よ。汝(なんじ)がこの名を譲る時が来るま で、篤き獣主の加護の有らん事を』」
「『新たなる、勇者【青い闘神・モーリス】よ。汝がこの名を譲る時が来るまで、篤き獣 主の加護の有らん事を』」
 70余の言葉尻は、ほとんどが歓声と化していた。
 野風・ティトー…いや、10代目『青い闘神・モーリス』は、重圧に必死で耐えながら、
「『古き、勇者【青い闘神・モーリス】よ、汝は現の名【弘(ひろ)き原・マリウス】を 解き放て』」
という、儀式の終焉の言葉を言った。

「野風…って、呼んじゃいけないンだよな、もう。…青い闘神、勇者の家に居る限り名 変えなきゃいけない、ってのは、なんか…つらいな」
 傷が完全に癒え、体調も整った往く雲・フェザーは、大きな荷物を背負い、精一杯の明 るさで友に語りかけた。
「でも、名誉だよ」
 若い…というより、幼い…勇者も、精一杯の笑顔で応えた。
「長く話すと、別れづらくなる、よなぁ」
「そうだね。つらくなるよね」
 二人の少年は、必死で笑っていた。必死で涙を堪えていた。
「俺は、大陸中を逃げて回る事になるかも知れない。だからもしかしたら、またこの村に 来るかも知れない」
「僕は、大陸中を冒険して回る事になるかも知れない。だからもしかしたら、この村から 出るかも知れない」
「でも、そのうちまた、どこかで逢えるさ」
「うん。きっと、逢えるよ」
 虎族の逃亡者は、小さな友人の目の前に、愛用の槍を差し出した。
「逢うのは、何年先になるのか判らない。コレを目印に持っていてくれ」
 猫族の勇者は、大きな友人の目の前に、愛用の弓を差し出した。
「僕も、同じ事を言おうと思っていた」

 二人の少年が別れてから20年が過ぎた。
 あの頃、小さく幼かった勇者はすっかり大人になり、まだ小さく幼い我が子にその称号 を譲ることを考えながら、病院のベッドの上で眠っている。

終わり


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